コラム

なぜ日本は狙われ続けるのか ― 2025年に起きた現実から学び、2026年に“確実に備える”ためのセキュリティー再点検

この記事は約6分で読めます。

「日本は安全」という思い込みが、最大の脆弱性だった

2025年を振り返ると、日本のサイバーセキュリティーを巡る状況は、はっきり言って楽観できる段階を完全に過ぎたと言えます。
それでもなお、多くの現場では「うちは狙われない」「大企業じゃないから大丈夫」「今まで問題なかった」という言葉が、日常的に使われ続けています。

これは技術力の問題ではありません。
リテラシーの問題です。

実際、日本は世界的に見ても「ITインフラは高度だが、運用と意識が追いついていない国」として、攻撃者から非常に都合の良い存在になっています。2025年は、その弱点が集中的に突かれた一年でした。

このコンテンツでは、

  • 2025年に日本で何が起き、何が露呈したのか
  • なぜ同じ被害が繰り返されるのか
  • 2026年に向けて、本当に注意すべきポイントは何か

を、専門用語に逃げず、「経営者・担当者・一般利用者が自分事として理解できる」視点で整理していきます。

2025年、日本で顕在化した「5つの致命的な甘さ」

フィッシングは「巧妙化」ではなく「日常業務化」した

2025年、フィッシング被害はもはや「騙された」というレベルではなく、
「普通に業務をしていたら踏んでいた」
という段階に入りました。

特に目立ったのが以下のパターンです。

  • 実在企業名+実在部署名+実在担当者名を組み合わせたメール
  • Teams / Slack / Google Drive など、業務ツールを装った通知
  • 「至急」「本日中」「未対応」の心理圧迫ワード

これらは、従来の「怪しい日本語」「明らかなURL」ではありません。
正規の業務フローと区別がつかないのです。

多くの日本企業では、
「怪しいメールに注意しましょう」という啓発で止まっていますが、
2025年時点ではそれはすでに機能しません

ランサムウェアは「大企業向け」ではなくなった

2025年に多発したのは、中小企業・医療機関・学校・地方自治体への攻撃でした。

理由は明確です。

  • セキュリティー専任者がいない
  • バックアップが「あるつもり」で動いていない
  • 古いVPN・NAS・RDPが放置されている

攻撃者にとっては、
「守りが弱く、支払い能力はある」
という、最もコスパの良い標的です。

ここで重要なのは、
被害が公表されないケースが非常に多いという点です。

表に出ていないだけで、2025年は「実質的な被害数」は統計の数倍に達していると見られています。

クラウド=安全、という誤解

AWS、Azure、Google Cloud を使っているから安全。
これは2025年でも、日本で最も根強い誤解の一つです。

実際に問題になったのは、

  • ストレージの公開設定ミス
  • APIキーのGitHub流出
  • IAM権限の過剰付与

つまり、クラウドそのものではなく、設定と運用の問題です。

クラウドは「魔法の箱」ではありません。
責任共有モデルを理解していない限り、オンプレより危険になるケースすらあります。

「パスワード文化」から脱却できなかった日本

2025年になっても、

  • 同じパスワードの使い回し
  • 社内共有パスワード
  • Excelで管理されたID一覧

が、普通に存在しています。

一方、攻撃側はすでに
パスワードを突破する前提で設計しています。

つまり、
「パスワードが漏れること」を前提に守れない組織は、
時間の問題で侵入されるということです。

インシデント対応は「技術」より「文化」で差が出た

2025年に被害を最小限で抑えられた組織には、共通点がありました。

  • 隠さず、すぐに共有する
  • 現場判断で遮断できる権限がある
  • 失敗を責めない文化がある

逆に被害を拡大させた組織は、

  • 上司の承認待ち
  • 報告をためらう空気
  • 「誰の責任か」を探し始める

セキュリティーは文化の鏡であることが、2025年ほど明確になった年はありません。

なぜ日本は「学んだはずなのに」繰り返すのか

形式主義の罠

日本では、

  • 年1回のeラーニング
  • チェックリストの確認
  • 形だけの監査対応

が「やったこと」になりがちです。

しかし攻撃者は、
人が慣れた瞬間を狙います

形式は整っていても、
「考える力」が育っていなければ、意味はありません。

「専門家に任せればいい」という思考停止

セキュリティーは専門領域です。
しかし、丸投げしてよい領域ではありません

2025年に起きた多くの事故は、

  • 設計時の意思決定
  • 運用ルールの妥協
  • 業務優先の例外対応

といった、非技術的な判断が引き金になっています。

被害を語らない文化

日本では、被害を公表すると、

  • 評判が落ちる
  • 責任を問われる
  • 顧客が離れる

という恐怖が先に立ちます。

結果として、
社会全体で学習が進まない

この構造自体が、
日本全体のセキュリティーレベルを下げています。

2026年に「特に注意すべき」現実的な脅威

AIを使った“個別最適化詐欺”

2026年に向けて最大の変化は、
攻撃が完全にパーソナライズされることです。

  • 過去のメール履歴
  • SNSの投稿
  • 会社のWebサイト

これらをAIが分析し、
「その人が信じやすい文面」を自動生成します。

もはや「怪しいかどうか」では判断できません。

音声・動画を使ったなりすまし

すでに海外では、

  • 社長の声で送金指示
  • 上司の顔でビデオ会議参加

といった被害が現実化しています。

日本は「声」と「立場」を信じる文化が強いため、
特に相性が悪い

サプライチェーンの弱点を突く攻撃

自社が強固でも、

  • 委託先
  • 開発ベンダー
  • SaaS事業者

のどこかが破られれば、影響を受けます。

2026年は、
「自分の会社だけ守る」という発想が通用しません。

セキュリティー事故=経営リスクの時代

2025年以降、
インシデントは「技術トラブル」ではなく、
株価・採用・取引に直結する経営問題になりました。

対応を誤れば、

  • 顧客離れ
  • 取引停止
  • 人材流出

が一気に起こります。

今すぐ見直すべき「考え方」の優先順位

ここで重要なのは、
高価なツールを入れることではありません

優先すべきは、以下の順番です。

  1. 「漏れる前提」で考える
  2. 人に依存しない仕組みを作る
  3. 迷ったら止められる権限を与える
  4. 失敗を共有できる空気を作る

これができない限り、
どんな最新技術も「飾り」に終わります。

セキュリティーは「怖がるもの」ではない

セキュリティーという言葉は、
不安や恐怖を煽りがちです。

しかし本質は違います。

「普通に仕事を続けるための基盤」
それがセキュリティーです。

2025年、日本は多くの失敗を経験しました。
それは同時に、学べる材料が大量に揃ったということでもあります。

2026年、
「何も起きなかった会社」と「立ち直れなかった会社」の差は、
今このタイミングで、どれだけ現実を直視できたかで決まります。

安全神話を捨て、
「備えるのが当たり前」の社会へ。

それが、日本が次に進むために、
どうしても必要な一歩です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました