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「冗長化してます」と言い切れる会社ほど、なぜか止まる —— 壊れる前提で設計していますか?

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「冗長化してます(キリッ)」という安心感の正体

「うちは冗長化してますよ。」

この言葉を聞くと、どこか安心する響きがあります。
技術に明るくない人でも、「なんとなく強そう」な印象を持つ言葉です。

冗長。
余分。
重複。

どこか“無駄を削ぎ落とす”ことが正義とされる現代において、
あえて“余分”を持つという思想は、いかにも高度な設計に見えます。

しかし、不思議なことに。

この言葉を自信満々に口にする会社ほど、
実際に止まったときのダメージが大きいことがあります。

なぜでしょうか。

それは、「冗長化」という言葉を知っていることと、
冗長化の思想を理解していることは、まったく別だからです。

冗長化とは何か。

それは単に“2つある状態”のことではありません。
それは“壊れる前提で作る姿勢”のことです。

壊れないようにするのではない。
壊れることを前提にする。

ここが、決定的に違うのです。

壊れない前提で作る人たち

多くの現場では、こう考えられています。

「このサーバは安定している」
「このクラウドは落ちない」
「この回線は大手だから安心」

もちろん、それらは間違っていません。
確率論としては、壊れにくいでしょう。

けれども、壊れないわけではない。

ハードディスクは摩耗します。
電源はいつか落ちます。
リージョンは停止します。
人はミスをします。

それでもどこかで、「うちは大丈夫」という空気が漂います。

そして障害が起きたときに、こう言います。

「想定外でした。」

冗長化を本当に理解している会社は、
この言葉を使いません。

なぜなら、想定しているからです。

壊れることを。

バックアップという安心の幻想

ここでよく登場するのが、バックアップです。

「毎日バックアップを取っています。」
「遠隔地にも保存しています。」

素晴らしい取り組みです。
しかし、ここで一つだけ冷静に考えてみましょう。

夜21時。
売上が最も伸びる時間帯。

サーバが落ちました。

「バックアップはあります。」

復旧にかかる時間は?

1時間。
3時間。
あるいは翌朝。

その間、顧客はどうしているでしょうか。

他社のサイトを見ています。

バックアップは“戻す”仕組みです。
冗長化は“止めない”仕組みです。

似ているようで、思想は正反対です。

バックアップがあるから安心、という言葉は、
実は“止まることを前提にしている”発言なのです。

2台あるから大丈夫、という危うさ

「サーバは2台構成です。」

これもよく聞く言葉です。

では、その2台はどこにありますか。

同じラック。
同じ電源系統。
同じデータセンター。
同じリージョン。

地震が来たら。
停電が起きたら。
火災が発生したら。

仲良く止まります。

それは冗長化ではありません。
それは“安心感の複製”です。

見た目は2つでも、リスクは1つ。

本当の冗長化は、
“失敗の独立性”を設計します。

一方が壊れても、もう一方は影響を受けない。
それをどこまで徹底できるか。

そこに本質があります。

冗長化は、なぜ軽視されるのか

冗長化は、不遇な技術です。

成功しても何も起きません。
止まらないだけです。

何も起きないという成功は、
ときに評価されません。

「今年も障害ゼロでした。」

「それは当たり前では?」

しかし止まるとこうなります。

「なぜ対策していなかったのか。」

冗長化は、成功すると空気になり、
失敗すると責任になる。

だから削られやすい。

「その待機サーバ、本当に必要?」
「その回線、コスト高くない?」

削減は簡単です。
効果が見えにくいから。

しかし削った効果は、
障害発生時にだけ、はっきり見えます。

しかも派手に。

最大の単一障害点は“人”

冗長化というと、機械の話に聞こえます。

しかし現実の最大の単一障害点は、人です。

「あの人しか分からない」
「あの人がいないと触れない」

その人が退職したら。
体調を崩したら。
長期出張に出たら。

止まります。

技術的に冗長でも、
組織が冗長でない会社は、実はとても多い。

ドキュメントがない。
手順が共有されていない。
パスワードが個人管理。

それは“属人化”という単一障害点です。

そして、これはサーバより壊れやすい。

冗長化はコストか、信用か

ここまで読むと、こう思うかもしれません。

「そこまでやるとコストがかかる。」

その通りです。

冗長化は安くありません。

しかし、考え方を変えてみましょう。

あなたの会社が3時間止まったら、
いくらの損失が出ますか。

売上だけではありません。

信用。
SNS拡散。
顧客の不安。
競合への流出。

止まることの本当のコストは、
数字に出にくいところにあります。

冗長化はコストではなく、
“信用を前払いする行為”です。

そして、最後に

ここまで、少しだけ笑いながら読めたかもしれません。

「うちは大丈夫。」
「そこまで大きくないし。」

そう思った方もいるでしょう。

でも、最後に一つだけ問いを置きます。

もし、今この瞬間に止まったら。

あなたは、胸を張ってこう言えますか。

「想定通りです。」

それとも、

「想定外でした。」

冗長化とは、
壊れない未来を祈ることではありません。

壊れた未来を、受け止める準備をすることです。

止まっていないのは、
設計が正しいからかもしれない。

でも、
たまたま運が良いだけかもしれない。

その違いは、
止まったときにしか分かりません。

そしてそのときには、
もう設計は変えられません。

まとめ

冗長化とは、余分を持つことではありません。
覚悟を持つことです。

壊れる前提で設計する覚悟。
止まらない未来に投資する覚悟。
見えないリスクに向き合う覚悟。

「冗長化してます」と言う前に、
もう一度だけ問いましょう。

本当に、止まりませんか?

その問いに静かに答えられる会社だけが、
本当に冗長化されています。

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